読書記録『ストレス脳』『運動脳』

アンデシュ・ハンセンのベストセラー、『ストレス脳』と『運動脳』を続けて読んだ。

不安やうつは脳が正常に防御してくれているからに他ならない。でも、ストレスが過剰になるとオーバーフローしてしまうからストレスを受けすぎないように意識することは大事だ。

孤独もよくない。どの程度の孤独で苦痛を感じるかは人それぞれだが、もともと人は社会の中で人と関わり合って生きている。SNSは孤独の解消にならない。

そして、運動だ。
ストレスを受けると放出されるコルチゾールが運動によって出にくくなる。
いくつもの事例でそのことが証明されている。さらにそのメカニズムを探り、どんな運動をどれだけするのが適切なのかを書いたのが『運動脳』。

もともとベストセラーであった『一流の頭脳』の新版であるが、コロナ禍で運動量がおしなべて低下していることに警鐘を鳴らしているかのようだ。

学業に打ち込む、生産性の高い仕事をする、集中力を高める、意欲的に行動する、健康に長生きする。そのためにはこうすればいい、とか、この食品がいい、という情報に溢れているが、まずは体を動かすことだ。
大人になっても脳には可塑性がある。

遅すぎることはない。

 

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読書記録『限りある時間の使い方』

人生はたったの4,000週間。

こんな気づきから始まる「自分の時間」の考察である。 

著者オリバー・バークマンは、それまでタイムマネジメントにどっぷりはまり込んでいた。それなのに、やらなければならないタスクはどんどん積み上がり、自分の時間がなくなりストレスが溜まる。

もしかしたらタイムマネジメントなんて意味がないのでは…

 

生産性、効率化ツールは自分を縛る呪いであると知れば、自分の可能性を過度に広がることなく心に平穏がもたらされると説く。

 

たしかに、最初は私もタイムマネジメントライフハックのような内容だと思っていたが、そんなちっぽけな話ではなかった。何度も戻りながらメモを取りながら時間をかけて読みこむほど大切なことが詰まっていた。メモはなんとノート13ページにも及んでもはや写本ができたくらいの分量になった。

誰かのレビューで概要を知るなんてもったいない、ぜひ手にとって読んでみてほしい(今朝の新聞広告で15万部と書いてあったので私が心配するまでもないですが)。

 

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読書記録『ショートカット思考』グレイス・ローダン著

今よりはるかに成長した姿、それが「MEプラス」。

誰もが上昇志向を持っているが、そう簡単には目標は達成しない。

なんか、無理そうだと思った瞬間目標を下げてしまう。

せっかく掲げた目標にまっしぐらに向かうことは困難なのだろうか。

それは行く手を阻むものの正体を知らないからであり、行動経済学を活用すれば最短で達成できるのだと著者は言う。

その6つのステップは、

1.最短で目指したい「目標」を定義する

2.ムダにしている「時間」を見つける

3.自分の「内側」を見つめる

4.自分の「外側」を見極める

5.仕事場の「環境」を見直す

6.己の「レジリエンス」を強化する

行く手を阻むバイアスをかわし、ジャーニーを楽しんでMEプラスに近づこう。

自分自身の思い込みにも大きなバイアスがかかっていることを思い知りました。

 

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読書記録『復活への底力』出口治明著

運命を受け入れ、前向きに生きる

やっぱりすごい人だった。
APU学長就任中脳卒中で倒れ、右半身麻痺と重度の失語症
もはや復職はおろか、日常生活もままならないと誰もが予想したが、出口さんは違った。

大分に戻って単身赴任をし、天空(APU別府)で学長に復職する。
そんな無茶とも言える目標を掲げ、リハビリに励んだ日々の記録。
リハビリに携わった医師、理学療法士作業療法士言語聴覚士を巻き込んで一つ一つ困難を乗り越えていく姿は涙が出そうだった。

自分の父も交通事故で脳挫傷となりそれまでの生活が一変した。入院期間は終わってしまい、あとは介護を受けて一生を終えるのかもしれないと覚悟しながらも、家族で支え、なんとか一人で散歩に行けるくらいまでは回復した。
それでも約2年の月日はかかったし、まったく平坦な道のりではなかった。
それを思い出すと、いろいろ重なる部分もあって胸が熱くなった。

いざというときになってから前向きに考えようとしても無理だろう。
『還暦からの底力』でも述べられていたように迷ったらやる、迷ったら行くことが平時から求められる。そして教養をつけておく。神話や歴史、哲学の中に困難を切り抜けるヒントを見つけられるかどうかで不測の事態に立ち向かえるか打倒されるかの運命を分ける。

類まれなる精神力という一言で片付けてはいけない。わたしたちにもできることはありそうだ。

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読書記録『人間の品性』下重暁子著

品性というのは、個人の意志だと思った。
従順なだけでは生きていても美しくはない。
勁さ(つよさ)が必要。

下重暁子の本には毎回唸らされる。
そして、こんなふうでありたいと憧れる。
ずっと仕事を続けてきたからこそ、言えることば。
自分のことは全て自分で決める潔さ。

品性はそんな明確な意志の女に宿る。
それは近頃見かけなくなった臈たけた女。
(ろうたけたひと)

つまらないことにくよくよするくらいなら、おいしいワインでも飲みに行けばいい。
というのは、私の都合のいい解釈だ。
ありがとう。
元気が出ました。

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読書記録『絶対悲観主義』楠木建

心配するな、きっとうまくいかないから

こういう心構えっていいのかもしれない。

そもそも期待するからがっかりするのであって、はじめから想定内だったと思えば気持ちは楽になる。

 

うまくいかないのが普通だという考え方は哲学の中にもあった。なるほど納得なのだが、自分が想定内だと腹落ちしても周囲と比較したり他人の目を気にしたら意味がない。

人の目を気にしない、これがツボなんじゃないかと思った。

楠木先生は高峰秀子さんを崇拝しているらしくそこがまた微笑ましい。私は大好きなカトリーヌ・ドヌーブの名言が出てきてますます嬉しくなった。

夢に日付なんていらない。いつまでに何かを達成しようとするからしんどいのだ。今日やりたいことをやれたら「幸せだ〜」と思うようにしたい。

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読書記録『掃除婦のための手引き書』ルシア・ベルリン

どんな苦境でも冷静にやりすごす。それは彼女が育った特殊な環境のせいなのか、まるで石か雲のようにその場の景色を作っているみたいな女性の物語だった。

アルコールを買いにいかないよう子供に財布を隠されているのに家中の小銭をかき集めて早朝開く店に朦朧とした足取りで歩く。

自分自身がアルコール中毒であるだけでなく叔父さんも母親もそうだったというが、特に悪びれているわけではない。だってそうなんだもの、という事実だけが淡々と語られる。

どの物語も決して人には言えないけれど自分の中に持っている小さな闇に重なる瞬間がある。はっとして切なくなる。

クライマックスは、「さあ土曜日だ」でやってきた。

主人公チャズは刑務所で再開したCDと文章のクラスに入る。ここに出てくるベヴィンズ先生という女性はおそらく著者自身なのだろう。

ある日文集に載せる作品を書いてくるよう指示が出た。ベヴィンズ先生曰く「長さがニ、三ページで、最後に死体が出てくる話を書いてほしいの。ただし死体は直接出さない。死体が出ることを言ってもだめ。話の最後に、このあと死体がでることがわかるようにする。」という難題だ。

CDの作品は鳥肌もので、ベヴィンズ先生は蒼白だった。CDの弟が殺されたことを誰も彼女に教えていなかったのに。

CDは出所後に殺されてしまう。そのことをまた書いてしまう「俺」はまだ失格だなと呟く。

読み手によってどこで心を揺さぶられるかはさまざまだと思うけれど、私はここだった。

 

(なんて変なタイトルだろう。)

初めて日経新聞の書評欄でこの本のことを知ったときそう思った。

けれど、本屋でも出会うことがなく忘れていたところ、第2弾の『すべての月、すべての年』の書評が出てきた。『掃除婦のための手引き書』が評判だったので第2弾なのだという。だんだん読みたいという気持ちが高まってきたとき、運良く文庫化されたことを知った。

読み進めていくとすっかり虜になっていた。この半生にしてこの作品、だれもが虜になること間違いない。

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